TMDA 2021年度 自己点検評価報告

1.本プログラムの履修・修得状況について

本プログラムは既存の自己修得科目群をもとに構成されており、科目履修登録とは別に、教育プログラムとしての履修を学生から受け付ける仕組みは準備していない(2022年4月現在)。よって、本プログラムを構成する4科目(「ICT入門」・「人工知能」・「データサイエンス入門」・「データサイエンス基礎」)のうちどれか1科目以上について、はじめて履修登録した年度・セメスターを「本プログラムの履修開始」と定義している。本プログラムを構成する各科目の履修登録及び成績は正確に把握できており、これらを以て、各年度における本プログラムの履修・修得状況を分析する体制となっている。

次に、2021年度における本プログラムの履修・修得状況について述べる。本学は全国に19の学部を持つ(2021年度)が、履修者は湘南校舎に集中している。これは本プログラムに関して地方校舎に対する周知が不十分であったことを示しており、2022年度においては、湘南校舎以外でのガイダンス等を通じて積極的な広報を展開していく計画である。なお、湘南校舎に限れば、履修者は湘南校舎の全学部に及んでいる。修了者についても多くの学部に分散しており、特に文学部・文化社会学部から修了者を出したことは、本プログラムが文系を含む幅広い学生を対象としていること、その意図や意義が学生にも伝わっている証左と考える。なお、修得状況については、本プログラムが4科目からなることから、複数年度をかけて修得する計画の学生が少なくないこと、本プログラムにおいて比較的難易度の高い科目である「データサイエンス基礎」の履修者が少ないことを踏まえ、継続的に状況を分析していく必要がある。

2.学修成果について

まず、本プログラムの達成目標は、本学学生が以下に示すAIとデータサイエンスに関する5つの能力を得ることである。

  • AIやデータサイエンスが、現代の社会変化とどのように関係しているか具体例を伴って説明できる
  • AIやデータサイエンスが、非常に多種多様・広範囲のデータを活用し、問題解決のツールとして具体例を説明できる
  • AIやデータサイエンスは、現代社会の様々な分野において、新しい価値を生み出していることについて具体例を説明できる
  • AIやデータサイエンスを扱う際は、個人情報の取り扱いや倫理の問題などを考慮しなければならないと、具体的に説明できる
  • AIやデータサイエンスを、自分の生活や学習、仕事に活かす基本的な手法を、具体的なデータをもとにして実践できる

本プログラムを構成する4科目全体の学習を通じて、上記プログラムの達成目標を達成するよう、各科目の授業目標・授業内容を構成している。このことを踏まえ、本プログラムの学修成果として、各科目の単位修得率・成績分布をもとに分析する体制となっている。

2021年度、本プログラムを構成する4科目の単位修得率(履修者全体)は、ICT入門 83.3%、人工知能 83.8%、データサイエンス入門 78.8%、データサイエンス基礎 82.9%と、概ね良好である。特に、2021年度、本プログラムを修了した22名の成績を詳細に分析すると、各科目のS評価A評価率は86.4%~100.0%と、全履修者における同比率(51.8%~64.1%)と比較して相当に高い。よって、本プログラム修了者は、本プログラムを構成する4科目での学修を通じ、目標とする学修成果は概ね得られたものと考えられる。

今後、さらに各授業においてより高い成績評価を得る学生を増やすために、各授業における学修ケアに留まらず、本プログラムに関する学習支援チーム(コミュニティチーム)での活動とその存在周知を活性化させていく計画である。

3.学生の内容理解度と他学生への推奨度について

本プログラムにおける学生の内容理解度と他学生への推奨度については、本学全授業を対象とした授業評価アンケートの結果と、本プログラムを修了した学生を対象としたフォローアップアンケートの結果に基づいて分析し、次年度授業内容の見直しを行うための基礎資料とする体制となっている。

(1) 内容の理解度について

2021年度について、授業評価アンケートの結果をみると、理解度及び学習到達目標達成の評価は本プログラムを構成する4科目全てにおいて、5段階評価の上位2段階(そう思う・ややそう思う)と回答した学生は75%以上であり、概ね良好な結果が得られている。次に、本プログラムを2021年度に修了した学生を対象とした実施したフォローアップアンケートの結果(回収36.4% 8件)をみると、本プログラムの達成目標である5項目のうち4項目について、最上位段階(強くそう思う)の回答が最も多かった。ただ、「データサイエンスやAIの基本的な活用法を理解できましたか」との項目のみは、「そう思う」との回答が最も多く、改善の余地があるものと考えている。この結果を踏まえ、次年度授業内容の見直しを進めており、その成果として、データサイエンス・AIの実践・体験の機会をより多くするよう、2022年度カリキュラム(シラバス)として具体化した。

(2) 他学生への推奨度について

2021年度について、授業評価アンケートに後輩等他の学生への推奨度を直接測る指標はないが、授業満足度の回答結果は本プログラムを構成する4科目すべてにおいて、そう思う・ややそう思うと回答した学生は80%以上を占めており、間接的に推奨度としても概ね良好と推測している。次に、本プログラムを2021年度に修了した学生を対象とした実施したフォローアップアンケートの結果(回収36.4% 8件)をみると、回答者全員が「勧めたいと思う」以上を選択しており、概ね良好な結果が得られた。なお、勧めたいと思う具体的な理由については、「扱うテーマは興味深かった」「遠隔授業展開が助かった」「多くの実践・実習ができた」といった点が挙げられていた(選択式回答)。特に遠隔授業展開についてはフリーコメントでも言及があり、遠隔授業による履修機会増大は学生にとって好意的にみられていることが観測できた。このことは他学生への気軽な推奨にもつながる重要な視点と考えている。

修了者フォローアップアンケート フリーコメント内容(回答抜粋)

”TMDA対象科目の履修の際に、抽選が優先されるのは非常にありがたく感じた。コンピュータ系の科目は遠隔授業が多いため競争率も高く、抽選で外れてしまい希望の科目を履修できないことが多々あった。そのため、興味のある単位を取りつつ教育プログラムを修了できたため、非常に有意義だったと感じている。

“ICT入門はコンピュータサイエンス基礎やプログラミング基礎など、多くの情報処理副専攻科目の基盤となる科目である。だが私は一年の春学期から三期に渡って抽選に落ち、在学序盤に受講することが出来なかった。よって、抽選が優先されるシステムなど、同じ分野で学んでいる多くの学生が早期に履修出来る環境を作ってほしいと考えている。”

“今回は、遠隔授業だからこそ参加出来たと思います。湘南以外のキャンパスに通っている自分にとって遠隔授業は助かりました。 “

“データサイエンスの2科目については、社会人になった後にも大変活かせると感じました。”

“人工知能においては文系の私にとって非常に難しい科目でした。今まで、触れる機会のなかった単元ばかりであったため、有意義な時間を過ごすことができたと思います。

4.全学的な履修者数、履修率、修得率向上に向けた計画の達成・進捗状況

本プログラムを構成する4科目については、履修登録者だけでなく、履修希望者の数を正確に把握できる仕組みを整えており、その内容に応じて開講コマ数や授業形態の改善・調整を図り、履修者数・履修率・修得率の拡大を目指す体制となっている。

2021年度について、プログラムの導入に相当する科目「ICT入門」では、履修希望者が定員を超過することによる履修制限が常態化しており、より多くの履修希望者を受け入れる体制を整えることが、本プログラムの履修率を向上させる大きなポイントである。具体的な方策として、開講クラス増、オンデマンド授業化による定員増などを検討する。また、「データサイエンス入門」もまた全体的に履修希望者の多い科目であるが、一部授業クラスにおいては数名~10数名程度の履修者に留まっており、各学科主専攻科目の配置等を踏まえ、時間割編成(開講曜日時限)の再検討を行う。
次に、難易度の比較的高い「データサイエンス基礎」は、開講クラス数4と他3科目より相対的に少ないにもかかわらず、履修希望者の定員超過は他より目立っていない。すなわち、本学学生の履修が本プログラムの一部にとどまっていることが、本プログラム全体の履修、即ち、修得率を高められていない大きな要因であると考えられる。ゆえに、本プログラム各科目での履修勧奨、「データサイエンス入門」から「データサイエンス基礎」への接続性向上、本プログラム全体を修得することによるメリット(大学公式の修了証明書発行等)周知方法の改善、などを検討し、履修希望者の拡大を図る。

5.教育プログラム修了者の進路、活躍状況、企業等の評価

本プログラム修了者の進路については、本学キャリア指導担当部署との連携に基づき、正確な情報把握が可能である。また、本学理系教育センターでの授業展開に協力を頂いている企業・団体・地域とのミーティングを通じて意見収集を行い、本プログラム修了者の採用状況や企業での評価を把握できる仕組みを整えている。
2021年度本プログラム修了者のうち、卒業生は2名である。それぞれ情報技術を活用できる企業への就職を果たしている。その追跡調査、就職先企業等からの意見聴取については、今後、本学キャリア指導担当部署との連携のもと、その状況把握を図っていく。残り在学生修了者20名については、本人へのフォローアップ、本人が所属する学科との情報交換を継続しており、その後の活躍状況、特に本プログラムを通じて修得した、数理・データサイエンス・AI分野の基礎知識・スキルを、それぞれの主専攻における学修・研究にどう生かしているかについて、その把握に努める。

6.産業界からの視点を含めた教育プログラム内容・手法等への意見

本学理系教育センターが全学開講している「ビジネスIT応用A/B」(2022年度カリキュラムから「社会情報実践」)は、遠隔インターンシップ授業(大学授業の中において疑似的にインターンシップを体験できる授業)として、連携する各企業から提示される問題解決にAI・データサイエンスを活用して取り組む実践的な授業であり、本プログラム修了者の受講を期待・推奨している。このことを踏まえ、理系教育センターでは、「ビジネスIT応用A/B」に参画いただいている企業担当者とのミーティングを通じ、本プログラムの内容・手法等について、産業界からの視点を含めた意見交換を実施することとしている。2022年4月に実施した最新のミーティングにおいては、問題解決の基本的なフレームやICTに関する基礎知識を踏まえて、データ分析におけるプロセス全体像を早期から意識させていくことが重要との意見で一致を見た。
これまでの産業界との議論を通じて、数理・データサイエンス・AI分野の理論・技法だけを特化して学ぶのではなく、社会とICT全般の学び(各副専攻科目群)の一部として本プログラムを位置づけるという本学理系教育センターの方向性については適切であると判断している。一方、数理・データサイエンス・AIを実際の問題解決にどのように活かせばよいのか、その意識を早期から醸成するために、小さな問題解決を実践する演習・ワークショップ等を本プログラムを構成する各科目内により多く組み込むか、もしくは授業外の活動として提供するかなど、既存授業内容と調整を図りつつ検討を進める必要がある。今後も「ビジネスIT応用A/B(社会情報実践)」の中で連携企業とディスカッションを重ね、本プログラムの学びの修正・改善を継続的に行なっていく。

7.数理・データサイエンス・AIを「学ぶ楽しさ」「学ぶことの意義」を理解させること

本プログラムは、理系教育センターが開講する全学対象科目全34科目(2021年度カリキュラム。2022年度より全9科目に再編)における履修モデルの一部として組み込まれており、本プログラムとそれ以外の科目群(プログラミング、ビジネスIT、マルチメディア等)との関連を明示することにより、数理・データサイエンス・AIを学ぶことによってどのような活用・活躍が考えられるのか、どのような分野とかかわりがあるのか、学生にわかりやすく伝わるよう工夫している。また、本プログラムを構成する4科目の中においても、授業導入として数理・データサイエンス・AIを学ぶ意義や課題を理解することを組み込んでいるほか、モデルカリキュラムにおける<リテラシーレベル>以外の部分については、授業クラスによって様々なツール・アプローチを提供し、学生の興味やスキルに応じて自由に選択できるようにしている。例えば、2021年度、データサイエンス入門においては、それぞれ、表計算ソフト(Excel)による実践重視のクラス、統計理論に重点を置いたクラス、BIツール(Tableau)の活用に取り組むクラス、人工知能とデータサイエンスとの理論的なかかわりに重点を置いたクラスなどを展開した。さらに、各授業においては、背景となる知識だけにとどまらず、実際のデータに基づく実習体験を組み込むことにより、学ぶ楽しさを実感してもらえるよう工夫している。

8.内容・水準を維持・向上しつつ、より「分かりやすい」授業とすること

本プログラムを主管する理系教育センターでは、授業評価アンケートの分析、産業界・地域関係者等とのミーティング、FD活動を通して、学生にとって「分かりやすい」授業とするための改善活動を恒常的に実施している。さらに、各担当者における授業改善成果を教員業績評価対象とすることにより、改善の実効を高める体制を整えている。
2021年度に開講した各授業において実践された工夫としては、
・日常にある題材トピックやデータ、現実に起こりそうな問題を用いることで、学習内容のイメージを高めること
・高校までの学習内容や他授業との関連を示し、復習の機会を与えることにより、理解定着を図ること
・ショートサイズの動画資料を提供することにより、各自のペースで振り返りの学習をしやすくすること
・説明だけでなく、実践のデモを映像等を活用して具体的に示すことにより、いかに実践すればよいか明確に伝えること
・SNSやチャット等による質問対応を行うことで、遠隔授業におけるインタラクティブ性を保つこと
などがある。